やったー2
気持ちのいい季節になりましたね。
先日、紹介した理研の大発見・113番元素の合成成功ですが、論文を見つけて頑張って読んでみました。
この論文が日本物理学会誌、JPSJ (Journal of the Physical Society of Japan) に出されたことは本当に喜ばしいことです。科学研究においては欧米の雑誌に大きく遅れを取っている日本ですから、日本の雑誌にこのような重要な論文を載せることが出来たと言うのは、税金の使い道としてこれほどいいことはありません。
科学界では、研究成果は査読誌に載って初めて世に認められたと見なされます。査読誌と言うのは、投稿された論文を審査員が読んで、合格したものだけが掲載されると言う雑誌です。投稿は誰でも出来て、掲載料は自分持ち、内容については雑誌のジャンルが合ってさえいれば何でも受け付けてくれます。基準に達していなければ容赦なく門前払いですが・・・
雑誌に寄りますが、論文一本に対して2〜3人の審査員が選ばれて匿名で審査を行います。審査員は編集長の権限で選ばれて、投稿者とのやり取りもすべて編集長を介してやります。審査結果が不満なら審査員に反論するのも自由ですし、中には「この審査員に私の論文を評価する能力はない」と主張して審査員を変えろと迫る剛の者もいますw
審査員には大体その道のベテランが選ばれますが、編集者によって流儀が異なるのか、身内の方がよくわかるだろうと投稿者グループと仲の良い審査員が選ばれる事もありますし、逆にライバルの方が欠点を見抜く力が大きいだろうと言うことで反対派から選ぶ事もあります。
さて、査読誌には Impact Factor と言う格付け基準があります。これは、その雑誌に載った論文がどれだけ引用されているかで決まる数字です。論文て要は「新発見したよー」とだけ書いてあるものなんですよ。その際、他の人がまだ見つけていないよと言うことを示すために、過去の関連文献を調べたけど載ってないと宣言する必要があります。つまり、引用ですね。この回数が多ければ多いほど「重要な」論文だと言うわけです。
必ずしもこれだけが判断基準だと言うことではありませんが、やはり欧米の雑誌に水をあけられるのは喜ばしいことではないですから、今回のような歴史に残る発見を、日本人の手で成し遂げ、日本で発表される(まあWebなので世界中に発表してるんですが)と言うのは、とても嬉しいことです。
これこそ、世界平和に対する日本の貢献と言うことが出来るのではないでしょうか。
前置きが長くなってしまいました。
以下、簡単な解説です。多少の齟齬はご勘弁下さい。
先日、紹介した理研の大発見・113番元素の合成成功ですが、論文を見つけて頑張って読んでみました。
この論文が日本物理学会誌、JPSJ (Journal of the Physical Society of Japan) に出されたことは本当に喜ばしいことです。科学研究においては欧米の雑誌に大きく遅れを取っている日本ですから、日本の雑誌にこのような重要な論文を載せることが出来たと言うのは、税金の使い道としてこれほどいいことはありません。
科学界では、研究成果は査読誌に載って初めて世に認められたと見なされます。査読誌と言うのは、投稿された論文を審査員が読んで、合格したものだけが掲載されると言う雑誌です。投稿は誰でも出来て、掲載料は自分持ち、内容については雑誌のジャンルが合ってさえいれば何でも受け付けてくれます。基準に達していなければ容赦なく門前払いですが・・・
雑誌に寄りますが、論文一本に対して2〜3人の審査員が選ばれて匿名で審査を行います。審査員は編集長の権限で選ばれて、投稿者とのやり取りもすべて編集長を介してやります。審査結果が不満なら審査員に反論するのも自由ですし、中には「この審査員に私の論文を評価する能力はない」と主張して審査員を変えろと迫る剛の者もいますw
審査員には大体その道のベテランが選ばれますが、編集者によって流儀が異なるのか、身内の方がよくわかるだろうと投稿者グループと仲の良い審査員が選ばれる事もありますし、逆にライバルの方が欠点を見抜く力が大きいだろうと言うことで反対派から選ぶ事もあります。
さて、査読誌には Impact Factor と言う格付け基準があります。これは、その雑誌に載った論文がどれだけ引用されているかで決まる数字です。論文て要は「新発見したよー」とだけ書いてあるものなんですよ。その際、他の人がまだ見つけていないよと言うことを示すために、過去の関連文献を調べたけど載ってないと宣言する必要があります。つまり、引用ですね。この回数が多ければ多いほど「重要な」論文だと言うわけです。
必ずしもこれだけが判断基準だと言うことではありませんが、やはり欧米の雑誌に水をあけられるのは喜ばしいことではないですから、今回のような歴史に残る発見を、日本人の手で成し遂げ、日本で発表される(まあWebなので世界中に発表してるんですが)と言うのは、とても嬉しいことです。
これこそ、世界平和に対する日本の貢献と言うことが出来るのではないでしょうか。
前置きが長くなってしまいました。
以下、簡単な解説です。多少の齟齬はご勘弁下さい。
題名は「113番元素の同位体278の生成と崩壊に関する新事実の確認」てな感じでしょうか。
自然界には基本的に安定同位体しかありません。放射能を持つような元素は、内部エネルギーによって自然に原子核が割れてしまって違う元素になってしまうからです。放っておくと壊れていくんですね。この時、他の元素になりきれずに余った欠片は様々な形で飛び散ってしまいます。もの凄ーく簡単に言うと、これが放射線の正体です。
自然界には92番までしか元素はありません。ウランが最も重い元素で、それよりも重い元素は核融合や核分裂を用いて人為的に作られたものです。そのため93番以降の元素はあまり安定なものはなく、大抵の場合ごくごく短い時間で壊れてしまいます。
この壊れ方には一定の法則があって、最初にこう壊れて次はこう、それからこうなって、とかちゃんと決まっているわけです。原子核は簡単に言うと陽子と中性子と言う二種類の粒子が、レゴみたいな感じで並んでくっ付いているものです。陽子の数の違い=別元素ですから、そのレゴブロックの塊みたいなのをぶん殴ってばらばらにしたり、ぶつけてくっ付けたりすると別の元素が出来るのです。
113番元素は、ビスマス209に亜鉛70をぶつけて作ったそうです。113番の質量数は278ですから、209+70で278+1のブロック塊が出来たと言うわけです。もちろん、こんなアンバランスなものが出来上がる確率は極々低く、2003年から17回に渡る実験で合計553日間ぶつけ続けて、やっと三個出来たのだそうです。2004年と2005年に一個ずつ、そして三個目が今年の夏に出来たと言うわけです。
出来上がった113番元素は、数ミリ秒で274+4に分かれて111番元素レントゲニウムになります。それから、4個ずつブロックがはずれて行って(原子番号は2ずつ減る)、109番マイトネリウム、107番ボーリウム、105番ドブニウムと崩壊していき、103番元素ローレンシウムになったところで探知機のレンジから外れてしまったそうです。
ローレンシウムから先の崩壊過程はよく知られているもので、探知機のレンジから外れるのは言わば当然のことで、実験の正しさを裏付けているとしています。前回、前々回に確認されたのと同じ崩壊過程を確認し、更にその先を測定したことで、113番元素の性質を解明出来たとして今回の発表となったようです。
成功のポイントは、ぶつける量を増やせたことと探知機の性能を上げたことのようです。原子核同士をぶつけるためにビルほどもある加速器を使うのですが、これは下敷きで髪の毛が引っ付くのと同じ原理で、電気のプラスとマイナスの反発を利用して原子核を飛ばすと言うものです。当然のことながらものごっつい電気を食いますからそうそう気軽に実験出来るわけもなく、機会がある際に出来るだけ多くのデータを掻き集めたことが勝因だったわけですね。
専門外なので少々いい加減なところもありますが、ご紹介とさせて頂きます。
長文にお付き合い頂きありがとうございました。
最後に一言。
やったー!
希望をありがとう!!
ちなみに論文はここからダウンロード出来ます。
jpsj.ipap.jp/link?JPSJ/81/103201
自然界には基本的に安定同位体しかありません。放射能を持つような元素は、内部エネルギーによって自然に原子核が割れてしまって違う元素になってしまうからです。放っておくと壊れていくんですね。この時、他の元素になりきれずに余った欠片は様々な形で飛び散ってしまいます。もの凄ーく簡単に言うと、これが放射線の正体です。
自然界には92番までしか元素はありません。ウランが最も重い元素で、それよりも重い元素は核融合や核分裂を用いて人為的に作られたものです。そのため93番以降の元素はあまり安定なものはなく、大抵の場合ごくごく短い時間で壊れてしまいます。
この壊れ方には一定の法則があって、最初にこう壊れて次はこう、それからこうなって、とかちゃんと決まっているわけです。原子核は簡単に言うと陽子と中性子と言う二種類の粒子が、レゴみたいな感じで並んでくっ付いているものです。陽子の数の違い=別元素ですから、そのレゴブロックの塊みたいなのをぶん殴ってばらばらにしたり、ぶつけてくっ付けたりすると別の元素が出来るのです。
113番元素は、ビスマス209に亜鉛70をぶつけて作ったそうです。113番の質量数は278ですから、209+70で278+1のブロック塊が出来たと言うわけです。もちろん、こんなアンバランスなものが出来上がる確率は極々低く、2003年から17回に渡る実験で合計553日間ぶつけ続けて、やっと三個出来たのだそうです。2004年と2005年に一個ずつ、そして三個目が今年の夏に出来たと言うわけです。
出来上がった113番元素は、数ミリ秒で274+4に分かれて111番元素レントゲニウムになります。それから、4個ずつブロックがはずれて行って(原子番号は2ずつ減る)、109番マイトネリウム、107番ボーリウム、105番ドブニウムと崩壊していき、103番元素ローレンシウムになったところで探知機のレンジから外れてしまったそうです。
ローレンシウムから先の崩壊過程はよく知られているもので、探知機のレンジから外れるのは言わば当然のことで、実験の正しさを裏付けているとしています。前回、前々回に確認されたのと同じ崩壊過程を確認し、更にその先を測定したことで、113番元素の性質を解明出来たとして今回の発表となったようです。
成功のポイントは、ぶつける量を増やせたことと探知機の性能を上げたことのようです。原子核同士をぶつけるためにビルほどもある加速器を使うのですが、これは下敷きで髪の毛が引っ付くのと同じ原理で、電気のプラスとマイナスの反発を利用して原子核を飛ばすと言うものです。当然のことながらものごっつい電気を食いますからそうそう気軽に実験出来るわけもなく、機会がある際に出来るだけ多くのデータを掻き集めたことが勝因だったわけですね。
専門外なので少々いい加減なところもありますが、ご紹介とさせて頂きます。
長文にお付き合い頂きありがとうございました。
最後に一言。
やったー!
希望をありがとう!!
ちなみに論文はここからダウンロード出来ます。
jpsj.ipap.jp/link?JPSJ/81/103201
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